chapter6LastGuardianchapter6「Victory」 戦闘型魔法陣展開から15分弱。 魔法陣内であるとはいえ、その地表の抉れは残酷だった。 ヒャイムが着地する場所の次には、青い弾丸と攻撃魔法の光が直撃した。 ヒャイム(そろそろ平地も少なくなってきちゃった・・・。 ウザイけど、アイツを呼ぶしかない、か) 抉られ粉砕する地表を目にし、ヒャイムは思った。 そして、イクトゥー内の精神通話で、"アイツ"を呼んだ。 レドナ(後数分ってとこで平地は抹消される。 その時が勝負だ) 地表を抉り粉砕する側のレドナも、勝敗が間近であることを確信した。 3分経過。 魔法陣内は上手く立つことができる場所は全て破壊された。 ボコボコの地形に立ち、レドナとフィーノは勝利に少し微笑んだ。 レドナ「終わりだ、ヒャイム!!」 フィーノ「れ、レドナさん!!あれ!!」 グリュンヒルの先端をヒャイムに向けるレドナに、フィーノが驚きの声をあげた。 それに気づき、後方を振り返る。 すると、そこには植物らしき馬鹿でかい怪物が、ずっしりと建造物の間に居た。 ???「ごっめ~んヒャイムぅ~! 遅れちゃった~、へへっ」 その馬鹿でかい植物の上に、ヒャイムと同年代らしき男が立っていた。 そいつも、黒いコートを着ていることからイクトゥーであることは目に見えていた。 ヒャイム「おそい!ソトゥー!!」 ヒャイムはソトゥーに怒鳴りつけた。 仲間とはいえ、本心は嫌っているらしい。 ソトゥー「うぅ~、そんなに怒らないでよ~」 ヒャイム「なくな!弱虫!!怒られたくないならこの2人を殺せ!」 レドナ「フィーノ、魔力残量は?」 フィーノ「もって後15回って所でしょうか・・・」 地面破壊のために、2人とも相当な体力と魔力を使っていた。 ここで新手と来れば、少々辛い。 ソトゥー「はぁ~い!じゃ、殺すね~!」 ソトゥーが、植物の上でなにやら指示を出した。 すると、その植物が地響きのする大声をだした。 うるさい、というより先に不気味だ、という気持ちのほうが強かった。 その植物は、足元から数本の触手を出し、2人に襲い掛かった。 フィーノ「プロテクトッ!!」 フィーノがクシュリダートを掲げ、小範囲の防御魔法を展開する。 触手はそのバリアに当たり、怯みながらもなお攻撃を続ける。 その間、レドナは防御魔法内で、リグティオンを構えていた。 先端に蒼い球体が出来ている。 そう、発動までに時間を要するが、その威力は馬鹿にならないチャージショットである。 レドナ「チャージ完了!!」 フィーノ「了解です!」 合図と共に、フィーノは防御魔法を解除する。 触手が襲い掛かる瞬間、リグティオンの先端から、直径1mものビーム砲が放たれた。 周囲の空気も振動させるチャージショットの威力で、触手は完全に引きちぎられた。 触手の本体が、また不気味な声をあげ、痛みを訴えているようだった。 ソトゥー「ひ、卑怯だぞぉ!そんなの!!」 レドナ「レベルの問題だ、諦めろ!」 ヒャイムと同年代らしくとも、頭の出来はこっちのほうが相当幼稚らしい。 レドナ(そういえば、ヒャイムが見当たらない・・・・?) 軽く周囲を確認するが、どうも魔法陣の権限をソトゥーにゆだね、撤退したようだ。 ソトゥー「でもね、ボクも簡単には退かないんだよぉー!」 さっきの倍の数の触手が、植物から現れた。 レドナ「もっかいプロテクト張れるか?」 フィーノ「あの数なら・・・・たぶん大丈夫です」 クシュリダートを構え、展開体制をとる。 ソトゥー「いっけぇ!!」 フィーノ「プロテクトッ!!」 襲い来る触手と同時に、再び防御魔法を展開した。 触手がバリアに当たる。 だが、数の多さで今度はチャージが完了する前に、フィーノがばてそうだった。 フィーノ「うぅ・・・っ!」 レドナ「ちっ、一発目をでかくしすぎたか・・・」 見ると、リグティオンのチャージ速度がさっきより大幅に落ちている。 第二波を想定せずにを打ったため、一発目を最大出力で放ってしまったからだ。 あまり負荷をかけると、リグティオンが大破する。 それだけは避けておきたい。 ソトゥー「あれれ~?さっきのドッカーンは打てそうに無いね~、あははは!!」 焦る状況を上から眺め、ソトゥーがあざ笑った。 フィーノ「レドナさん・・・・もう限界ですっ・・・っ!!」 レドナ「ちっ・・・レムリアを放つっきゃないか」 決心したレドナは、グリュンヒルとリグティオンをその場に投げ捨てた。 両目を閉じ、"レムリア"を想う。 開いた右手に明るく、神秘さを連想させる淡い緑の魔法陣。 かっと両目を開き、触手を一点に見た。 レドナ「喰らいやがれ!!レムリアッ・スラッシャァァッ!!!」 右手を勢いよく突き出した。 緑色の光の閃光が、フィーノの張ったバリアを抜け、一直線上に光り輝く。 その間にあった触手は引きちぎれ、焼け爛れていた。 そのまま、空中に浮かんだままのレドナの目は、次にソトゥを捉えた。 驚きに、その場に立ち竦むソトゥの脅えた姿を。 ソトゥ「・・・・ほえ?・・・え!?・・・えぇぇぇ!!??」 レドナ「もう一発行くぜ!!レムリアァァァ・・・・」 再び、レドナの右手に魔法陣が展開された。 淡い緑色の光を、恐れおののく目で、ソトゥはそれをみつめた。 レドナ「スラッシャァァァァッ!!!」 ソトゥ「イヤだ・・・・いやだ・・・うあああ!!!ヒャイムぅぅ~!!」 叫ぶレドナの声と、泣き叫ぶソトゥの声よりも大きいレムリア・スラッシャーの爆発音が響く。 ソトゥが使っていた植物怪物の肉片が飛び散る。 その中に、ソトゥの人影があったが、それに気づくものはいなかった。 レドナが地面に着地し、振り向いた後の光景は少々グロテスクなものだった。 レドナ「終った・・・・か・・・・っ」 そう、言い終えたレドナは、バタリと地面に倒れた。 フィーノ「れ、レドナさん!?レドナさん!!」 慌てて、フィーノが駆け寄り、レドナの体を起こす。 そして、レドナの手を握った。 フィーノ(ぁ・・・冷たい。 ・・・そっか、レムリアの魔力消費は物理戦闘系には辛いものですしね・・・) 多大な魔力を使った後特有の症状を確認すると、フィーノはレドナに肩を貸した。 そして、小範囲移動魔法を4、5回使って、戦闘開始の位置、デパートの屋上へと戻った。 ソトゥが敗れたことと連動し、戦闘区域を作ってくれていた魔法陣が消滅していく。 時は戻り、この神下市は、通常の時を歩み始めた。 真「・・・・・ん?おい!レドナ!!!」 さっきまでの戦闘を一切掴めていない真と香澄が、気を失っているレドナを見て駆け寄った。 香澄「さっき戦闘があったの?」 フィーノ「えぇ、なんとか敵は倒せましたけど・・・。 魔力の使いすぎで、レドナさんはちょっと眠ってるみたいです」 少し微笑んで、滅多に見られないレドナの寝顔を見た。 親友である真と香澄も、この姿のレドナは見たことが無かった。 真「そっか・・・じゃ、少し静かにしてやっとくか」 フィーノ「そうですね、魔力回復も一定量回復すれば元気になりますし」 香澄「それにしても・・・・。 クールなわりには、寝顔って可愛いんだね」 心地よさそうにして、フィーノに抱えられて眠るレドナを見て、くすくす笑った。 真「ほんとだな~。今のうちに写メでも取っとくか」 そう言って、真はポケットから黒色の携帯を取り出して、写真を撮った。 香澄「私にもメールで送っといてくれる?」 真「オッケーオッケー」 笑いながら言う香澄に、すんなりOKをだす。 真は、再び携帯をいじくって、香澄に貴重価値高のレドナの寝顔付きメールを送った。 フィーノ「ふふっ、でも後でバレたら、レドナさんに怒られますよぉ?」 真「怒られても気にしない気にしない~。 バレなきゃいいって奴よ!」 それから、レドナが目を覚ましたのは10分後のことだった。 その間、戦闘の出来事はフィーノが全て真と香澄に伝えてあった。 しかし、レドナの寝顔を真と香澄が所持していることは、一切漏れなかった。 その後は、4人でデパートのゲームセンターで少し遊んだ後、それぞれ帰宅していった。 夕暮れに染まる街を歩くフィーノが、ふとレドナに言った。 フィーノ「あ、そういえば、レドナさんってレムリアも使えたんですね~」 感心したように、フィーノが言う。 レドナ「あぁ、緊急時のためにってとこかな。 それなりの威力はキープしてるつもりだ」 先ほどの戦闘でレドナが放った"レムリア"。 実際、レムリアをガーディアンが使うのは、そう珍しいことではない。 本来は魔法戦闘系のガーディアンが窮地に陥ったときの必殺技のようなものである。 魔力消費は馬鹿にできない量だが、その分の威力は申し分の無い。 しかし、その多大な魔力を消費するため、物理戦闘系のガーディアンは使用しない。 むしろ、レムリアの発動構成を把握し、瞬時に発動用魔法陣を展開するのは、普段魔法を使わないものには難しすぎる。 そういうことで、物理戦闘系のレドナがレムリアを使うのは、多少の驚きなわけである。 しかも2回も連続で発動用魔法陣を展開し、放つのも尋常ではない。 フィーノ「ほんと、レドナさんって万能型なんですね。 なんだか、安心できます~」 レドナ「あんまり頼りすぎると痛い目見るぞ。 俺だって、限界っつー言葉は持ってるんだから」 フィーノ「分かってますよっ!回復の時とかは私頑張ります!」 翌朝。 レドナの目覚めそうそうに送られてきたメール。 無駄に真からである。 眠気眼を手でこすりながら、メールの内容を見る。 =============================== title:寝顔の君を from:Sin Takada ------------------------------- おっはよー暁ー(^○^)ノ 眠くてボーっとしてそうだから、 眠気も吹っ飛ぶもの送ってやる。 ぁ、エロ画像とかじゃないから、 安心しろ(笑 ・・・でも、小学生に見せると 笑い死ぬからR-15な(汗汗 =============================== 次に送られてきたメールは、レドナの寝顔だった。 朝っぱらから酷いものを見せられたレドナの気分はブルーそのものだった。 ゆっくりと、しかしキッパリとベットから体を起こし、大きく伸びをする。 多少の怒りを奥歯でかみ締めながら、レドナは制服に着替え、居間へと向かった。 レドナ「・・・・っと、その前に」 気づいたように、レドナは立ち止まり、お気に入りの黒と赤のワインカラーの携帯を開いた。 パッパと文字を打ち込むと、再びレドナは居間へと階段を下りた。 高田家の朝は、毎日早いのだが、その中の高田 真のみは、いつも遅れ気味だった。 彼が、高田家内で一番最初に目が覚めた、などと言う日は、槍が降ってくるのでは、と皆心配した。 しかし、今日はその"槍が降ってくる日"に該当する。 さすがに、母親より早くは起きられなかったが、妹と父親よりも、真は早く起きた。 それは、レドナの起きるタイミングにあわせ、あのメールを送るためだ。 送り終えた後、真は自室のベットにダイブして、腹を抱えて大笑いをした。 途端、真の携帯に一本のメールが届いた。 真「・・・・・うぁ、暁反応早すぎっちゅーに」 バツの悪そうな顔をして、しぶしぶメールを見る。 =============================== title:今日の天候 from:Akira Hoha ------------------------------- おはよーさん 今日もいい天気だね。 今日は、後方からマンモスが ぶつかって来たり、 岩石が上空から降ってくるらしい 範囲は高田 真付近だってさ よかったね(´ー`)bグッ =============================== 恐怖心に襲われた真は、しばらく攻撃回避の策を練っていた。 そして、ふと思いついた真は、そのメールにこう返事を返した。 =============================== title:Re:今日の天気 from:Sin takada ------------------------------- 残念!その予報はハズレ! 実は、香澄も持ってるんだな~ ってことで、攻撃範囲は 2名にしとけ(-д-lll =============================== すると、即行でこの返事が返ってきた。 =============================== title:うん from:Akira Hoha ------------------------------- そっか・・・ でも、いやだ(´ー`)vブイッ =============================== やっぱり、と思っていた真であるが、実際に言われるとへこむものだ。 殴られる決心をし、真は再び二度寝状態に入った。 しかし、2分後、親が起こしに来るということで、真の就寝時間は打ち切られた。 AM8:10、神下中学校付近通学路。 いつもと同刻に、レドナと真と香澄は合流した。 レドナ「おっはよ!今日も天気がいいし、風も心地いいパシリ日和だね・・・」 第一声、レドナの挨拶は、真に対する宣戦布告であった。 真「パシリ日和なんて、そ、そんなねぇ、ははは・・・」 理解できずにいる香澄と、理解できているからこそ焦る真。 レドナ「それにしても、今日の鞄は重いなー、体育もあるし」 真「是非、持たせてください!」 そう言って、真はレドナの冷え切った怒りに燃え滾る視線を感じ、レドナの鞄を持った。 レドナ「ほら、香澄も重そうだぞ~」 香澄「へっ?わ、私は大丈夫だよー」 真「いえ、持たせてください!」 半ば強引に、香澄の鞄も持った。 その姿を、1歩引いて香澄はレドナの耳元でひそひそと話した。 香澄「真君、どうかしたの?」 レドナ「さぁ?親切はいいことだしな」 笑いながら、そう言いつつ3人は学校に向かった。 すると、少しいった所で、神下高校の制服を着た女子が反対側から歩いてきた。 真「ありゃ?神下高校って反対側じゃね?」 それに気づいた真が第一に反応する。 香澄「そうだよね、忘れ物とかかなぁ?」 レドナ「あんまり他人事に関与すると、後が痛いぜ」 レドナの言葉に同意し、3人は再びさきほどの会話の続きを始めた。 そして、その女子が、レドナたちの横を通る瞬間―― ???「放課後、神下中学の屋上で待ってるよ、レドナ」 レドナ「ぇ―――」 その声は、レドナだけに聞こえるような小さい声だった。 そして、その声は確かに"暁"ではなく"レドナ"と呼んだ。 驚いて、振り向いた後は、その女子は消えていた。 真「んー、どうした暁?さっきの子に惚れ・・・・あれ!?」 香澄「さ、さっき横度通って行ったよ・・・ね」 続いて振り向いた真と香澄も、驚きの声をあげた。 確かに横を通って行った。 そして、振り返るとその姿はまるで幽霊のように消えていたのだ。 レドナ「あの制服、神下高校の制服だよな」 真「あ、あぁ、そーだけど・・・」 一息ついて、レドナは思い口を開いた。 レドナ「ちっ、また厄介な介入者が増えやがった・・・」 消えていった、曲がり角の無い道を睨み、レドナは呟くように言った。 レドナの名を知ってる。 それに、放課後呼び出しまで受けた。 ガーディアンか、ソーサラーかは判らない。 しかし、今後レドナに大きく関与してくる存在であることは間違いなかった。 To be next chapter |